模擬裁判ー双方の反論(準備書面)をもとに構成ー

現在まで複数回審理が行われました。今回は、原告側・被告(市)側双方の準備書面(裁判所に提出された公文書ですが公開は差し控えさせて頂きます、必要であればご相談ください)を踏まえ、もし裁判官であればどのような判断に至るかという観点から、友人の法律家と法的論点を整理した私見をまとめてみました。実際の裁判所の判断ではありませんのでご留意ください。

行政処分の適法性、事実認定、処分基準の運用、聴聞手続の在り方など、介護事業の現場にも直結する重要なテーマを扱っています。関心のある方の参考になれば幸いです。

結論(裁判官としての判断)

結論:本件指定取消処分は違法であり、取消す。

理由は以下の4点が決定的です。


判断理由(裁判官としての意見)

1 事実認定に重大な誤りがある(行訴法30条:裁量権の逸脱)

●(1)人員基準違反の認定は不適切

被告は「管理者・計画作成者・介護従事者の兼務」を事実上否定し、原告関戸氏の勤務時間を恣意的に分割している。
しかし、

  • 基準省令は兼務を明確に許容
  • 同一建物内での兼務は全国的に広く認められている
  • 被告は兼務を否定する明確な自治体基準を持っていない
  • 原告の勤務実態(8時間介護従事)は客観資料と整合

以上から、被告の人員基準違反認定は「重要な事実の基礎を欠く」。

●(2)食事量・カロリー計算は医学的根拠を欠く

被告の計算は

  • 利用者の自宅での食事を考慮していない
  • 医学的指標(アルブミン値・血糖値・酸素飽和度等)を一切検討していない
  • 追加食材の存在を無視
  • 1日3食の総量を推計で置き換えている

これは「行政処分の基礎となる事実認定」としては著しく不十分であり、裁量権の逸脱に該当する。

●(3)A氏の体重減少と介護との因果関係が立証されていない

高齢者の衰弱・体重減少は医学的評価が不可欠であるが、被告は医師の意見書も医学的データも提出していない。
行政処分の根拠としては到底足りない。


2 処分基準の処理手順を踏んでいない(裁量権の濫用)

厚労省の「処分基準の考え方の例」は、全国の自治体が採用する実質的な裁量基準である。
その手順は明確で、

  • 運営基準違反 → 標準は「勧告」
  • 人格尊重義務違反(虐待) → 標準は「全部停止3か月」
  • そこから加重・軽減事由を勘案

という段階的判断が求められる。

しかし被告は、

  • 最初から取消処分ありき
  • 勧告・命令・停止という段階的手順を完全に無視
  • 加重・軽減事由の検討をした形跡がない

これは「処分基準の適用を欠く」=裁量権の濫用に該当する。


3 聴聞手続に重大な瑕疵がある(行手法13条・18条・22条)

  • 代理人の参加を妨害
  • 文書閲覧の機会を実質的に奪った
  • 続行申請を不合理に拒否
  • 主宰者が処分庁の職員で中立性を欠く

聴聞は「重大な不利益処分の前提となる憲法上の手続保障」であり、
このような運用は「手続の実質的欠落」と評価され、取消事由となる。


4 比例原則違反(行訴法30条)

  • 利用者の生活の継続性
  • 取消処分による法人・役員の5年間の欠格
  • 地域の介護資源の喪失

これらの不利益に比して、

  • 違反事実の立証は不十分
  • 勧告・停止という段階的手段が存在
  • 取消しという最終手段を選ぶ合理性がない

よって「処分の重さが著しく均衡を欠く」。


最終的な判決文(要旨)


主文

被告が令和○年○月○日付で原告に対して行った指定取消処分を取り消す。


理由(要旨)

  1. 被告の事実認定には、管理者兼務の法的解釈、食事量の評価、A氏の体重減少の因果関係等において、重要な事実の基礎を欠く点が多く、裁量権の逸脱が認められる。
  2. 被告は厚生労働省の処分基準に基づく段階的判断手順を踏まず、いきなり取消処分を選択しており、裁量権の濫用が認められる。
  3. 聴聞手続において代理人参加の妨害、続行申請の不合理な拒否等、重大な手続的瑕疵が存在し、適正手続を欠く。
  4. 取消処分は利用者・法人に過大な不利益を与え、比例原則に反する。

以上より、本件処分は違法であり、取消しを免れない。


裁判官としての付言(判決の最後に書く「意見」)

本件は、行政庁が介護事業者に対して行う監督権限の行使として極めて重大な処分であるにもかかわらず、
事実認定・手続・量定のいずれにおいても慎重さを欠いた事案である。

特に、利用者の生命・身体の安全を守るという行政目的は重要であるが、
その目的を理由に手続保障を軽視することは許されない。

行政庁は、今後、

  • 事実認定の精度
  • 医学的根拠の確保
  • 聴聞手続の適正な運用
  • 処分基準に基づく段階的判断
    を徹底し、
    介護サービスの質の確保と事業者の権利保障の双方を調和させる必要がある。 以上。

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模擬裁判では上記のような結論に至る蓋然性が極めて明確な案件です。後は行政がどのような姿勢・態度を示すのか、それは住民に向ける眼差しと同じはずです(一事が万事)。大月市行政の実態が浮き彫りになる局面であり、大月市の理念である「信頼と協働のまちづくり」が口先だけかどうかが如実に表れます。マスコミも注目しております、住民の皆様も成り行きに注目していただければ幸いです。(関戸 元彦)


 

 

新しい年の始まりに、今お伝えしたいこと

新しい年を迎え、地域の皆さまには日頃より温かいご支援をいただき、心より感謝申し上げます。
12月のブログでは、一年間の歩みを振り返りながら、行政との対話の必要性について触れました。
今回は、その続きとして、現在の状況をできるだけわかりやすくお伝えしたいと思います。

私自身は、今回の手続の流れから“指定取り消しありきを前提に進められたのではないか”という印象を持っています。


いま争点になっているのは「人員配置基準」です

介護事業所には、決められた人数の職員を配置するルールがあります。
これは、利用者の皆さまが安心してサービスを受けられるようにするための大切な基準です。

私たちはこの基準を守るために、

  • 職員の勤務記録
  • 実際のシフト
    などを整えて運営してきました。

しかし、市は一部の職員について、実際に働いていた時間を「勤務していない」と扱っている状況です。
その理由は、残念ながら示されていません。


私自身の勤務時間も、実態と異なる形で扱われています

市は、私の勤務時間を次のように区切って計算しています。

  • 介護職員として 2時間
  • その他雑務の時間

これは、監査の際に私が「たまたま前日の動き」を説明した内容を、
「毎日この通り働いている」と決めつけてしまったものです。

実際には、日によって必要な業務が異なり、時間の使い方も変わります。
それを一度の聞き取りだけで固定されてしまうのは、どうしても無理があります。


裁判で問われているのは「なぜ市がそのように判断したのか」です

私たちは、勤務記録や職員の説明など、事実に基づく資料をすべて提出しています。
それでも、市が勤務時間を否認したり、私の勤務時間を恣意的に区切った理由は示されていません。

裁判では、
「市がなぜそのような判断をしたのか」
が大きな争点になっています。

12月のブログでお伝えしたように、私たちが求めているのは対立ではありません。
必要なのは、事実に基づく説明と、丁寧な対話です。


新しい年も、日々のケアを大切に

行政とのやり取りが続いていても、利用者の皆さまの生活は毎日続いていきます。
私たちはこれまで通り、

  • 丁寧なケア
  • 安心できる環境づくり
  • 職員が働きやすい職場づくり

を大切にしながら、地域の暮らしを支えていきます。


最後に

1月は、新しい一年の始まりです。
今回の件でご心配をおかけしていることは重く受け止めていますが、
私たちはこれからも、事実に基づき、誠実に説明を続けていきます。

地域の皆さまに安心していただけるよう、
そして行政にも、地域のためにより良い判断をしていただけるよう、
粘り強く向き合ってまいります。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。